アートメディアが作り出す都市再創造型アートフェス。「Study:大阪関西国際芸術祭」

  • author 久保憲司
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アートメディアが作り出す都市再創造型アートフェス。「Study:大阪関西国際芸術祭」
Image: ARTLOGUE

グラストンベリー・フェスティバルで、フジロック生みの親である日高正博さんが「こんなの日本でやりたいな」とつぶやかれた時に、僕は一緒にいました。その時、僕が思ったのは「こんなの日本で出来るわけないでしょう」でした。

それが、今や日本中フェスだらけです。日高さんがやるまでフェスっていうアイデアを誰も知らなかったのか!と笑ってしまいます。

イギリスのグラストンベリー・フェスティバルの元ネタ、ウッドストックを産んだアメリカのバンド、ジェーンズ・アディクションのぺリー・ファレルでさえ「お前らこんなこと出来て、いいな」とグラストンベリーのスタッフに言ったら「君らがやったこと真似しただけだよ」と言われ、それがロラパルーザとなって、コーチェラなどのアメリカのフェス・ブームの先駆けとなった。

時代遅れだったけど、誰も知られずに密かに楽しんでいたものが知れ渡ってからのフェスが社会に与えた影響は面白い。

「こんなこと出来て、いいな」と思われるようなフェス作り

アート・フェスティバルもまさにこれですよね。こんな楽しいイベントがあるでしょうか? アートローグさんはアート・フェスティバルの本質をよく分かっておられる。代表の鈴木大輔さんの言動を見ていてひしひしと感じました。

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「Study:大阪関西国際芸術祭 / アートフェア 2022」の会場風景
Photo: Kohei Matsumura

鈴木さんは大阪市立大学都市研究プラザを経て起業された方で、大学が始めるスタートアップ企業の見本のような方です。今だったらYouTuberがクラウドファンディングやってアートフェスやるぜみたいな感じになるのかもしれませんが、もっとしっかりと企業や国と連携して、僕らのために面白いことをしてくれそうです。

そんな彼が今目指すのは、2025年の大阪万博にむけて、大阪で世界の「ヴェネチア・ビエンナーレ」と並べられるような、日本を代表するアート・フェスティバルを作ることです。

大阪をアートの中心地に

その前哨線として彼が考えているのが、来年1月28日から2月13日に行なわれる「Study:大阪関西国際芸術祭 2023」。食べ物も美味い、物価も安い、人もいいという大阪。外国からの旅行者が大好きな、いや日本人も大好きな街、大阪で知的なアート・フェスをやるというのは正しい。

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「Study:大阪関西国際芸術祭 / アートフェア 2022」の会場風景/小山登美夫ギャラリー
Photo: Kohei Matsumura

日本を代表するアートフェスと言えば、「横浜トリエンナーレ」、新潟の「大地の芸術祭」など色々あるが、そこに大阪が食い込んでくるのはとってもおもしろいと思うのです。

落合陽一さんの飛田新地をリサーチするプロジェクトは、大きな話題を呼びそうですし、どんどん開発されていっている梅田のグランフロント大阪では、日常に溶け込んでしまった“痕跡”に焦点を当て、その奥に存在するであろう目に見えない不確かな部分から作品を制作されている葭村太一さんが、開発によってなくなったものの“痕跡”をあばいてくれるかもしれません。

グランフロント大阪のような僕らが今いいなと思うエリアは、日雇で働く労働者の方たちが作ってきてくれました。そんな人たちが住む西成区釜ヶ崎という街を大学に見立て「学び合いたい人がいれば、そこが大学」として、地域のさまざな施設を会場に、年間100講座を開催する「釜ヶ崎芸術大学」も会場となるそうです。

釜ヶ崎と同じように大阪の歴史を見守ってきたような建築物、 大阪府立中之島図書館では、ここ数年SNSをきっかけに東アジアで爆発的な人気を獲得している日本のアーティストたちを、キュレーターの沓名美和さんが紹介してくれます。

まだまだたくさんのアーティストが参加されるそう。外国からのヘッドライナーはまだ交渉中みたいで誰が来るかは内緒だそうですが、誰が来ようが楽しみでしかないですよね。大阪がアートの街になるようにみんなで応援していきましょう。

Source: ​Study:大阪関西国際芸術祭 / アートフェア 2023 via ARTLOGUE