グリーンバッグ撮影の進化系は「マゼンタライト」を足し算

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  • author Andrew Liszewski - Gizmodo US
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  • そうこ
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グリーンバッグ撮影の進化系は「マゼンタライト」を足し算

近年の動画コンテンツに必要不可欠な存在、グリーンバック

最近ではアプリのフィルターでも簡単に合成できますが、プロのコンテンツは本格的なグリーンバックを使ってこそ。制作スタジオレベルの完璧な仕上がりには、優秀な特殊効果デザイナーとそれ相当のソフトウェアが必要になります。

これをもう少し簡単にできないかとNetflixが研究しているのが、緑の補色である赤紫、マゼンタカラーを活用した方法です。

古くから使用されている従来のグリーンバック撮影には課題があります。1つは、グリーンバックと同じ緑は消えてしまう(消さないよう編集の手間が増える)ので、メイクや衣装での使用を避けること。役者や物など映像の対象となるものの周辺に背景の緑の照り返しが発生するので、それを編集で修正すること。また風になびく髪の毛などを適切に切り取るのも時間がかかる編集作業になります。編集に時間がかかればかかるほど制作コストも上昇してしまうのです。

グリーンバッグ+マゼンタライト

Netflixが研究しているのは、従来の課題を解消し、コストと時間のかかるポストプロダクションをなるべく減らすもの。それがこれ、撮影風景が緑とマゼンタの2極化です。

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Image: Netflix

背景はそのまま通常のグリーンバック(テストのため緑表示のLEDスクリーンを使用)ですが、周辺から役者と小道具にマゼンタの照明をあてています。

人間の目には、緑と紫のカオスな映像に見えますが、これを撮影するカメラには被写体がシルエットのように浮かぶ緑のチャンネルが記録されます。

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左:現場で人間の目に見えるシーン。右:デジカメの緑のチャンネルで見たシーン。
Image: Netflix

デジカメで捉えた緑のチャンネルから、各コマをコントラストのはっきりした白黒に切り取ります。このやり方、ガラス瓶やコップなど透明なものでも対応できるのが大きな利点。

が、この方法だとマゼンタ色の照明を当てられた役者や小道具は紫のまま。そこで登場するのは、マシンラーニングの色彩技術です。別途、通常ライトで撮影された映像を学習したAIモデルが、役者と小道具のマゼンタ色を取り除き、元の色味に整えてくれます。

課題はリアルタイムプレビュー

現段階ではまだ実験ですが、将来的にはより早く、より正確な合成技術となる可能性があります。が、これにも課題があって…。

問題は、実際の撮影現場がマゼンタ照明で赤紫一色となるので、その場にいる撮影スタッフが映像を確認しづらい、適切な色味での画をイメージしにくいこと。そう、この手方はリアルタイムでは活用できず、あくまでもポストプロダクション技術だからです。現在、Netflix研究チームは、このリアルタイムプレビューの開発に取り組み中だとか。

Netflixって、DVDのデリバリーレンタルから始まって、ネット配信、オリジナル作品製作までは誰もが知っていますが、撮影技術の研究もしていたんですね。

Source: New Scientist