マイクロプラスチック、5mm以下の小さな小さなプラスチック粒。
環境や人体に悪影響だと言われていますが、哺乳類にとって実際にどう影響するのかは、今まであまりわかっていませんでした。
マウス実験をまとめた論文
化学系メディア「International Journal of Molecular Science」に掲載された論文で、その長期的影響の一部が明らかになりました。研究を行なったのは米東部のロードアイランド大学。
研究では濃度の異なるマイクロプラスチックを含む水をマウスに与え、体内にどのように蓄積されていくのか、行動への影響などを調査しました。
消化器以外にも侵入
その結果、マウス体内で消化器系以外にも複数の臓器の組織において、マイクロプラスチックが蓄積していることが確認されました。
研究チームの1人、ロードアイランド大学神経科学のJamie Ross教授は、研究結果についてこうコメントしています。
「動物の糞便にはマイクロプラスチックが含まれるだろうと予想しており、そこは驚きはしませんでした。
しかし、肝臓、脾臓、腎臓の中の細胞にも、マイクロプラスチックが発見されたのには驚きました。消化器官の中心部ではなく、その内部の組織にも入り込んでいたのです」
肝臓、脾臓、腎臓でプラスティックが検出されたということは、水と共に飲み込んだマイクロプラスチックが、血液の流れに入り込んでいたということです。その結果、消化器系以外の臓器にも達してしまったということ。
マウスの行動にも変化が
マウスによって摂取した水のマイクロプラスチック濃度が異なっており、研究はその差についても触れています。
マイクロプラスチックを高濃度で含んだ水、低濃度の水、マイクロプラスチックなしの水、3つをそれぞれ異なるマウスグループに3週間摂取させました。その後、オープンフィールド試験(箱の中で一定時間観測する)を実施、90分間の行動を観察しました。
マイクロプラスチックで落ち着きをなくす?
高濃度のマイクロプラスチックを摂取したマウスは、低濃度またはただの水を摂取したマウスと比べ、箱の中を長く移動するなど、不安定な行動が多く見られました。マイクロプラスチックの摂取期間がたった3週間だったことを考えると、この行動の違いは非常に大きいといえます。
脳内炎症も…
行動観察だけでなく物理的に脳を調べたところ、マイクロプラスチックを摂取したマウスの脳には炎症が見られました。
また、脳の働きをサポートするグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)も低下。GFAP低下は、マウスのアルツハイマーを含む神経変性疾患の初期段階と関連があると考えられています。
これは研究チームも予想していなかった結果であり、今後マイクロプラスチックと神経疾患のさらなる研究を深めていく考え。
「1度体内に入り込んだマイクロプラスチックはどうなるのか、そのライフサイクルの理解をより深めたいきたいです。また、プラスチックが脳の恒常性にどう影響するのかも理解していきたい」と語るRoss教授。不要なプラスティック製品を減らすため、この研究論文が他の汚染防止努力と連携していくことを望んでいます。
「プラスティック、特に環境や健康にとって不必要な使い捨てプラスティックの使用は考え直す必要があります」