よりによってiPhone 15発表の数時間前というタイミング。
世界中がアップル発表会で盛り上がった12日(日本時間13日)、フランス政府がiPhone 12の販売停止を命じました。
理由は「欧州連合(EU)の法定基準値を超える電波が人体に吸収されるおそれがあるから」。
職員をアップルストアに出向かせて、店頭で売られていないことを確認するほか、準拠の対応が見られなかった場合、リコールも辞さない構えです。
これに対しAppleは「あらゆる国際基準に準拠している」と異議を唱えていますよ。
EUの基準を超えるのはどんなとき?
人体の一定質量に一定時間内に吸収される電波のエネルギー量を業界では「比吸収率(Specific Absorption Rate:SAR)」と呼んで、各国政府が管理しています。
ANFRが各社の携帯端末約140種を対象に行なった実験では、人体とiPhone 12の距離が5mm以内(手に持つ、尻ポケに入れる)のときに比吸収率が基準値を超えることが確認されたのだそう(5.74W/kgで基準の4.0W/kgを上回った)。
もっと離した状態(ジャケットのポケット、かばんの中)なら基準値内(2.0W/kg)でセーフでした。
2週間以内に直らなければ全品回収
Appleは「iPhone 12はさまざまな国際機関から国際放射基準準拠の認証を得ている」と反論中ですが、ANFRを総括するJean-Noel Barrotデジタル経済担当副大臣は「端末の問題ではないのでソフトウェアをアップデートすることで解決できるのではないか」と Reutersに言っています。
「Appleは2週間以内に対応しなければならない」
「対応を怠った場合、市場に出回るiPhone 12すべての全品回収を命じる用意がある。ルールはあらゆる会社に適用される。デジタル大手も例外ではない」
このように語り、SNFRの動きが引き金になってEU諸外国にも同様の動きが「雪だるま式」に拡大することを期待しているみたいですよ?
本当に危ないの?
ちなみに英語圏ではこのニュース、放射能と同じ「radiation」という言葉で報じられています。
思わず核爆弾のきのこ雲を連想してしまいますが 、ここで言う「radiation」は単に空中を移動するエネルギーのこと。かならずしも危険とは言えません。
全部が全部、肌を溶かしたりDNAを改変したりするイオン化(電離)状態のエネルギー放出とは限らないし、 極端な話、ろうそくの火から出る熱だってある種の「radiation」。少し離れれば人体には特に影響はありませんからね。
携帯電話が通信で使うのはマイクロ波といって、家のWi-Fiや電子レンジと同じ周波数帯の電波です。いちおうEUの基準は北米・アジア全般より厳しめで「ユーザーに影響が出ることが実証されている値より10倍低いレベル」になっていると、デジタル副大臣自身がLe Parisienに語っているので、そこまで慌てることでもないような…。
急に放出量が上がったなら話は別ですが、とっくの昔に店頭から消えているであろうiPhone 12の電波のことを今さら言われても、できることは限られていそう。
アプデで電波を弱くしたら、それはそれで接続が不安定になるとかないのかな? 気になります。