上空の飛行機からロケットを宇宙へ…革新的だったVirgin Orbitが破産した理由

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  • author Tim Fernholz - Gizmodo US
  • [原文]
  • 湯木進悟
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上空の飛行機からロケットを宇宙へ…革新的だったVirgin Orbitが破産した理由
Photo: Virgin Orbit

理想だけでは勝てない…?

地上の発射台で待機するロケットから、カウントダウンとともに華々しく打ち上げられるロケットの姿。これこそ宇宙旅行へ飛び立つスタイルという常識を打ち破ってきたのが、Richard Branson氏の率いるVirgin Galactic。そこから衛星の打ち上げ事業などを専門とするVirgin Orbitが設立されたものの、このほどChapter 11の連邦破産法第11条の適用が申請され、事実上の破産状態となってしまいました。

空中発射が抱えた現実問題

Virgin Orbitの最大の特徴は、改造ボーイング747の翼下にセットされて上空へ飛び立った「LauncherOne」のロケットが、そのまま飛行機から空中発射されて宇宙へ向かうことにあります。2年前に空中発射に成功し、地上に巨大な発射台を必要としないフレキシブルな打ち上げスタイルは、コスト削減につながり、今後の宇宙計画における革新的な役割を果たすとの期待も集めていました。

しかしながら、飛行機で上空へ持って行かれてから発射するスタイルのため、LauncherOneに積載できるのは数百kgの重量に収まる、非常に小さな衛星だけです。しかも1度の打ち上げにかかる費用は1200万ドル(約16億円)。このところ宇宙計画で存在感を増すSpaceXよりも高額になってしまうことが問題視されていました。

なお、SpaceXの巨大な「Falcon 9」の打ち上げロケットは、1機のコストが4億ドル(約540億円)なのに対し、Virgin Orbitは、一連の打ち上げシステムの開発に10億ドル(約1400億円)もかかってしまったそうです。

Virgin Orbitが、この巨額の開発費を回収する利益を生み出すには、次々とコンスタントにLauncherOneで小型衛星の打ち上げを希望する顧客を獲得しては回していく必要があったのですが、今年に入って打ち上げに失敗したことで資金繰りが悪化。その後の資金調達の頓挫から、破産状態に陥ってしまったとのことですね。

空中発射で宇宙へ向かうという、いわば奇抜なビジネスモデルは、結局のところ、スタンダードに地上の巨大な発射台から大型ロケットを飛ばすスタイルに勝ることができなかったのが現実のようです。まだVirgin Orbitの技術資産を高く評価して、どこかが救済してくれる望みが完全に断たれたわけではありませんが、やはり成功と収益が求められる現実は厳しいものがありますよね。